抗生物質等の二次代謝の調節機作の最も単純なモデル系として、自己耐性遺伝子を取り上げ、自己耐性遺伝子として、ストレプトマイシン(SM)燐酸化酵素の遺伝子2種、strAとsmKについて、その発現機作の研究を行った。 1.放線菌プラスミドベクタ-pIJ702に各遺伝子を挿入し、SM生産菌に形質転換し耐性能の増加とSM生産性向上の可能性を検討した。いずれの耐性遺伝子の場合も耐性、SM生産性に顕著な影響を持たなかった。 2.メラニン色素を形質転換の指標とする放線菌及び大腸菌のプロモ-タ-検索用ベクタ-を作成した。このベクタ-を用い、プロモ-タ-部の不明なsmK遺伝子のプロモ-タ-部を明らかにした。 3.Streptomyces griseusの培養経過に応じて、上記2種の耐性遺伝子の発現経過を調べた結果、培養後期にstrAの発現が見られたのに対し、smKは発現していない事が判った。 4.strAの発現調節機作を明かにする為に、SM耐性等の欠失変異株について解析した。その結果、strAの転写段階に欠落のある事が判明した。 5.親株、変異株から調製した精製ポリメラ-ゼを用いたin vitro RNA合成系を確立し、一次代謝系遺伝子としてxylanase geneを、二次代謝系遺伝子としてstrAを用いて転写能を測定した結果、二次代謝系遺伝子は、その発現に特異的なRNA polymeraseにより発現調節されている事が明かとなった。
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