平成元年度は、C_3作物として夏生のイネ並びに冬生のエンバクを、C_4作物としてトウモロコシを供試し、栄養生長期を対象に、ポット栽培した材料の灌水をシャ断することによって土壌水分減少過程における光合成速度、蒸散速度の変化を植物体の水ポテンシャル、気孔コンダクタンス及び炭酸固定酵素(RuBPカルボキシラ-ゼ、PEPカルボキシラ-ゼ)の活性の変化から検討した。 その結果、夏期に生育したイネ、トウモロコシの場合、土壌の乾燥化(水ストレス)に伴ない光合成、蒸散速度は低下し、両作物とも-1.2Mpaの水ポテンシャルにおいて零となった。しかし、その過程における両作物の水ストレスに対する反応は同じではなく、イネの方が急速な低下を示した。これは、イネの場合、トウモロコシに比べて気孔閉鎖が鋭敏でなく、蒸散による体内水分損失が大きいためであった。その結果、水利用効率はイネよりトウモロコシで大きかった。これに対して、冬期に生育させたエンバクは、イネ、トウモロコシに比べて、土壌乾燥に伴なう光合成・蒸散速度の低下がゆるやかで-1.2Mpaになっても零とはならなかった。また水ポテンシャル、気孔コンダクタンスも同じ傾向で、水利用効率はトウモロコシより大きい結果となった。これは冬期に生育したエンバクでは体内の高炭水化物濃度によって浸透ポテンシャルが高まり、吸水能が高まったためと考えられる。この点春期に再度実験する必要がある。 次に、土壌水分減少過程における炭酸固定酵素の活性変化であるが、RuBPカルボキシラ-ゼ、PEPカルボキシラ-ゼとも水ストレスによる活性低下は認められなかった。これは短期間水分ストレス処理のため酵素の機能を低下させるに至らなかったものと判断される。以上から、土壌水分減少に伴う光合成速度、水利用効率の低下の種間差には気孔の機能を介した気孔コンダクタンスが密接に関係していることが確認された。
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