草型および個葉の光合成能力が異なると思われる6品種の稲を栽培し、これらの品種間の二面交配により30組合わせのF_1雑種を作成した。これらのF_1を1/5000aワグネルポットに1本植で栽培し、実験に供した。個葉の光合成速度、呼吸速度、窒素含量、クロロフィル含量、SLA、1株穂重について調査した。その結果、(1)光合成速度は多くの組合わせでヘテロシスを示し、逆に呼吸は親よりも低い値を示す組合わせが多く、F_1は物質生産上有利な特性を持つことを明らかにした。(2)窒素含量、クロロフィル含量に関しては、顕著なヘテロシスは発現しなかった。(3)SLAはF_1が大きくなり、F_1では親よりも葉が薄くなる傾向がみられた。(4)1株穂重については多くの組合わせでヘテロシス現象が現れた。(5)光合成速度における正逆交雑間差については、特定の正逆交雑間差、一般的正逆交雑間差ともに大差はなかった。(6)光合成速度に関して、品種の特定組合わせ能力に差が現れ、組合わせ能力の高いものでは、中間親に対して約40%のヘテロシスを示した。また、品種の一般組合わせ能力にも差が現れ、本実験に用いた品種の中では紫稲が高く、この品種は全組合わせ平均で約24%のヘテロシスを示した。(7)光合成速度、葉身の窒素含量、クロロフィル含量のヘテロシス間には有意な正の相関がみられた。このことは、個葉の光合成速度のヘテロシスが葉身の光合成関連要素におけるヘテロシスの相加的効果に起因することを示唆している。
|