雄性不稔細胞質が光合成関連要因に及ぼす影響を明らかにするために、雄性不稔細胞質(WA)を持つ雄性不稔系統である珍汕97Aとその維持系統である珍汕97Bを母体に用い、この両系統に稔性回復系統及び非稔性回復系統を含む10品種を交配して、雄性不稔細胞質を持つF_1(SF_1)とその維持系統の細胞質を持つF_1(FF_1と略す)を作成し、これらのF_1の光合成速度、蒸散速度、窒素含量、クロロフィル含量の差異について検討した。その結果、光合成能力では、2組合せはSF_1の方がFF_1より高かったが、有意差は認められなかった。1組合せはFF_1の方がSF_1より高く、5%水準で有意であった。光合成速度を測定した葉のクロロフィル含量及び窒素含量を測定した結果は3組合せともSF_1とFF_1の間に有意差が認められなかった。光強度と個葉の光合成速度の関係については、回復系統を花粉親に用いた場合も非回復系統を花粉親に用いた場合も両F_1(SF_1及びFF_1)の間にははっきりとした差異は見られなかった。また、光強度と蒸散速度の関係でも光強度と光合成速度の関係と同様な傾向を示した。以上の結果から雄性不稔細胞質(WA)は個葉光合成能力、蒸散速度および葉内クロロフィル含量、窒素含量には影響を与えないと考えられる。次に光合成関連要素間の相関関係について検討した結果、個葉の光合成速度と蒸散速度、クロロフィル含量、窒素含量の間には正の有意な相関がみられ、特に光合成速度と蒸散速度の相関が高かった。また、光合成速度におけるヘテロシスについて、光合成関連要因のなかで、主にどの要素の影響が大きいかについて検討したところ、組合せによって影響する要素が異なる傾向がみられた。
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