本研究は、作物の物質生産上重要な要素の1つである個葉の光合成速度とそれに関連する形質を選んで測定を行い、稲の光合成速度におけるヘテロシスの発現機構について、生理学的および遺伝学的立場から検討することを目的として実験した。結果は次の通りである。 1).F_1の個葉で両親の光合成速度を上回る組合せがみられた。 2).個葉の光合成速度と蒸散速度、水蒸気交換係数、可溶性タンパク含量、クロロフィル含量、窒素含量との間に正の有意な相関がみられ、特に光合成速度と蒸散速度、水蒸気交換係数の相関が高かった。 3)F_2における個葉の光合成速度、蒸散速度、水蒸気交換係数、可溶性タンパク含量、クロロフィル含量の頻度分布について検討した結果、2頂分布を示すものや左右対称に近い分布を示すものなど組合せや測定した形質によって分布の様相が異なっており、必ずしも一定ではなかった。この結果から、光合成速度及びそれに関連する形質の遺伝に関しては、単一の主動遺伝子のみに支配されるのではなく、複数の微動遺伝子が支配する部分も大きいと推論した。 4).雄性不稔細胞質(WA)は光合成速度、蒸散速度、水蒸気交換係数、可溶性タンパク含量、クロロフィル含量には影響しないと思われる。
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