本研究は、自家不和合性を示す2xヒュウガナツと、その枝変りによって生じた同質4倍体で自家和合性を示す4xヒュウガナツを材料として、受粉時の認知識別と不和合反応の機構について検討を進めることを目的としており、初年度には次の2点について検討を加え、一部の成績は昭和63年度園芸学会秋季大会で発表した。 1.花粉ならびに雌ずいの含有タンパクの電気泳動分析 2xならびに4xヒュウガナツの花粉ならびに雌ずい各部位に含まれる可溶性タンパクを等電点電気泳動で分析し系統間差異を調査したところ、花粉に著しい差が見られ、花柱にもかなりの差異が認められた。 2.メンターポーレン効果 対峙受粉や時間差二重受粉において見られる4xヒュウガナツ花粉のメンターポーレン効果について知見を広めるため、花粉形成と花粉管伸長に際してどのような異常が見られるかを検鏡調査した。 (1)4xヒュウガナツでは、花粉母細胞の段階で約1/4が退化し、減数分裂時の染色体の移動にも異常が見られた。その結果、正常な小胞子形成が見られず、1〜9分子という各種の小胞子型が観察され、成熟花粉のサイズにバラツキが生じ、奇形花粉も多数観察された。 (2)4xヒュウガナツ花粉は、2xヒュウガナツ花粉に比べて、FDA反応性が低く、人工培地上で発芽させた場合の花粉管中の核の挙動にも明らかに異常が認められた。 (3)4xヒュウガナツ花粉の、2xならびに4xヒュウガナツ雌ずい内における花粉管伸長は順調で、正常に受精が行なわれていると思われた。しかるに、同花粉を用いて2xヒュウガナツに対峙受粉や時間差二重受粉を行った場合、雌ずい内を伸長する花粉管の数が特に増加しているようには思われなかった。
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