1.沖縄、本州、北海道のキリギリス集団の休眠性を比較した。とくに亜熱帯における適応機構を知るために、那覇における気温の季節周期をシミュレ-トした条件に卵をおいたところ、眼点形成卵は産卵翌年の春にふ化したが、眼点未形成卵は夏に眼点を形成した後に再び冬を越し、2年目の春にふ化した。これで沖縄でも2年卵があることが証明された。北海道のハネナガキリギリス、本州のキリギリス、オキナワキリギリスは相互に交雑可能であり、妊性のあるF1、F2が得られたから、従来独立種とされていたこれらの集団は、亜種レベルの分化段階にあると思われた。 2.弘前産のコバネイナゴにおいて、幼虫の齢数が光周期に支配されることを発見した。短日では5齢型、長日では6齢型になり、光周感受期は3齢以前にあった。6齢型は5齢型よりも幼虫期間が長く、大きな成虫となり、妊性が高い。新たに発見されたこの光周反応は、季節適応の一面を示すものと考えられる。 3.日周期性を支配する概日系と光周性との関係をヨトウガで追究した。この昆虫の光周反応は砂時計型だと思われていたが、温度依存的に振動型反応が現れた。光周測時機構の作動様式を解析した結果、速やかに減衰する振動系が関わっていると推定された。 4.ミナミマダラスズにおいては翅型の変化を光周反応の指標としているが、選抜した長翅系統と短翅系統を交配して、翅型を支配する遺伝子の一部は常染色体に、一部は性染色体にあると推定された。卵の休眠性の変異にも淘汰は有効に作用し、休眠レベルの違う5系統を得て、機構適応の進化について有益な示唆が得られた。 上記のどの実験においても光周条件のモニタ-には、本補助金によって購入した照度センサ-を用いた。
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