本研究はDNA組み換え技術を用いてウイルス抵抗性植物作出のための基礎条件を分子レベルで解析することを目的とする。 1、In vitroにおけるブロムモザイクウイルスRNA合成系を用い、RNA合成におよぼす種々のRNA断片や蛋白質について検討した。(1)In Vitro RNA合成系にBMVの外被蛋白質を加えるとRNA合成は加えた蛋白質に比例して阻害された。このような現象はBSAやTMVの外被蛋白質を加えたときには認められなかった。またこの阻害効果はRNAと外被蛋白質とを前もって反応させておくとより強く現われるが、合成開始後のRNA鎖の伸長は阻害しなかった。BMV RNAのcDNAから3′末端200塩基のRNAを用いて同じ様な実験を行ったが、この場合もRNAの合成が外被蛋白質によって強く阻害された。また反応産物をしょ糖密度公配遠心によって分析した結果全くウイルス粒子ができていないことから、この阻害作用は外被蛋白質とRNAの再構成されることによって起こるのではなく、外被蛋白質とポリメラーゼのRNA結合部位への競合であることが明らかとなった。(2)BMV RNAのcDNAからゲノムRNAに相補的な3′末端200塩基および5′末端1200塩基のRNAを合成し、in vitro RNA合成系に加えたところ5′末端1200塩基のアンチセンスRNAはRNA合成を強く阻害した。(3)キュウリモザイクウイルス耐性のタバコを作出する目的で外被蛋白質遺伝子のクローニングと塩基配列を決定した。その結果、本研究に用いたキュウリモザイクウイルスのY系統の外被蛋白質遺伝子218残基からなっていることが分かった。外被蛋白質遺伝子のcDNA断片をカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターとターミネーターの間に挿入した。一方、カナマイシン耐性遺伝子をもつベクターも作製し、二つのベクターを混合し、同時にエレクトロポレーション法によってプロトプラストに導入した。
|