家蚕における不受精卵の発現を究明する手がかりとして、不受精卵多発系統と正常卵系統を用い、体液と卵内の遊離アミノ酸を調べ、比較検討した。その結果、不受精卵多発系統の方が正常卵系統と比較して、多く含まれていたアミノ酸の種類は次のとおりであった。体液においてはタウリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、メチオニン、β-アラニンなどであった。逆に少なかったアミノ酸の種類として、セリン、プロリン、シトシン、チロシンなどであった。また卵内における遊離アミノ酸組成についてみた場合、不受精卵多発系統の方が正常卵系統に比し、多く存在したアミノ酸類はアスパルギン酸、グルタミン酸、シトシン、イソロイシンなどであった。逆に少なかったアミノ酸類はスレオニン、セリン、グルタミン、グリシン、アラニン、チロシン及びフェニルアラニンなどで、そのうち、アラニンの差が極めて顕著であった。このように両系統間でかなりのアミノ酸組成に差がみられたことより、両系統のタンパクにその性状において、差異があることを示唆する実験結果をえた。 次に両系統間における中性脂肪を調べるために、薄層クロマトグラフィ-によって、ジグリセリドとトリグリセリドを分離し、精製段階を経て、高速液体クロマトグラとガスクロマトグラフを用いて、それぞれの画分における脂肪酸組成比などを調べ比較検討した。その結果、体液内には主にジグリセリドが存在し、不受精卵多発系統と正常卵系統間で顕著な差異が認められたのはC_<18>:3とC_<18>:0であった。また卵内には主にトリグリセリドが存在し、C_<16>:0とC_<18>:3の組成分で差異が認められた。
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