研究概要 |
鱗翅目昆虫において,幼若ホルモンが精子形成にどのような影響を及ぼすかセルソ-タ-を用いて調べてみた。5齢期に幼若ホルモン類似物であるマシタを2.5,5及び10μgそれぞれ投与し,熟蚕期に精巣を摘出し,精子形成の状況をフロ-サイトメトリ-で分析した。 その結果,G_1期の細胞は80チャンネルに,G_2+M期の細胞が160チャンネルに,精子細胞は40チャンネルの位置に認められた。原種の精巣は,G_2+M期の細胞に比べ,80チャンネルにあるG_1期の細胞が多かった。幼若ホルモンを投与された精巣は,投与されなかったものと比べてG_1期の細胞がさらに多くなる傾向が認められた。また,40チャンネルに現れる精子細胞数は幼若ホルモンの投与量が多くなるにつれて,少なくなった。しかし,交雅第1代では原種でみられたほどその傾向は明確ではなかったが幼若ホルモン量が多い場合には明らかに少なくなった。それ故,幼若ホルモンは精子細胞の形成に対し抑制的に作用することが明らかになった。しかも,この場合においてもG_1期の細胞が幼若ホルモン投与によって増加することからみて,精子細胞数の減少に対する律速要因はG_1期にあると考えてよいようである。幼若ホルモンを投与した場合,不受精現象が多くみられることとこれらの現象とを併せ考えてみると,不受精の発現は幼若ホルモンの作用によって形成される精子細胞数の減少と密接な関連のあることが示唆された。
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