研究概要 |
^<15>NO^-_3の利用によって、昼間及び夜間において、根部の硝酸還元量(Rr)と還元窒素の茎葉部への転流量(Tx)、茎葉部の硝酸還元量(Rs)と還元窒素の根部へ再転流量(Tp)を定量的に把握し、植物の硝酸利用における根の硝酸還元能の意義を明らかにしようとした。 予め無窒素培地に生育させた大麦幼植物を人工気象室(明暗各12時間、温度20℃一定)で、3つの実験、すなわち(^<15>NO^-_3+NO^-_2)、(NO^-_3+^<15>NO^-_2)をそれぞれ吸収させるもの及び根を分けて、一方より(NO^-_3+NO^-_2)を他方より(^<15>NO^-_3+NO^-_2)を吸収させるもの、を照明点灯時と消灯時に開始し、12時間後、24時間後、36時間後に、前2つの実験では根部と茎葉部の還元^<15>N量とNO^-_3含量を定量し、3番目の実験ではNO^-_3吸収根中の還元^<15>N量を定量した。これらの結果からGojonら(Plant Physiol.82:254-260,1986)の計算モデルに従って、Rr、Tx、Rs、Tpを算出した。(添加NO^-_3:NO^-_2比は1.8:0.2)。 その結果、1)根部の硝酸還元量は定常期(24ー36h)より誘導期(0ー12h)に、昼間より夜間に多く、茎葉部の硝酸還元量はこれを逆になり、2)誘導期では根部の硝酸還元量は還元窒素の根への蓄積量を土廻るが、茎葉部の還元窒素量は還元窒素の茎葉部への蓄積量には及ばず、この傾向は夜間に顕著で、3)定常期の昼間ではこの両者はほぼつり合うが、夜間ではまた誘導期と同じ状態になり、4)根部の硝酸還元量が減り、茎葉部の硝酸還元量が増えると還元窒素の根部への再転流量が増え、夜間には還元窒素の茎葉部への転流が増え、根部への再転流量は減る、などが判り、根と茎葉は養元窒素に関して相互扶養関係にあり、さらにこの関係は各々の器官の還元窒素要求度、硝酸還元力に応じ、転流を通じて調節されていることが明らかとなった。 NADH硝酸還元酵素とNAD(P)H硝酸還元酵素の分離精製、活性測定の予備実験は順調に進んでいるので、次年度計画も予定通り行える見込である。
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