大麦幼植物に存在するNAD(P)H硝酸還元酵素とNADH硝酸還元酵素のin vitro活性の昼夜変動を明らかにし、これと前年度の^<15>NO_3^-利用によって得た根部及び茎葉部のin vivo硝酸還元量の昼夜変動とを対比し、これらの相互関係を明らかにすることによって、根の硝酸還元機能の意義を明らかにしようとした。 研究実施計画通り、まず、大麦根抽出液よりNAD(P)H硝酸還元酵素とNADH硝酸還元酵素をブル-セファロ-ズのアフィニティクロマトにより分離し、前者の酵素のNADPH活性とNADH活性の比が1.24±0.05(n=10)であることを明らかにした。ついで、この比の値を用いて、両硝酸還元酵素の含有量の昼夜変動を推定した。すなわち、前年度と同じ人工気象室において、明暗各12時間の栽培条件下で、無硝酸培地に生育した大麦幼植物を用い、点灯開始時と消灯時に前年度と同じ培養液を与えて硝酸還元酵素を誘導し、4時間ごとに36時間にわたって根部と茎葉部の両硝酸還元酵素のin vitro活性を定量した。その結果、1)根部ではNAD(P)H硝酸還元酵素とNADH硝酸還元酵素は同程度存在したが、茎葉部では前者の酵素が極く微量で、95%以上はNADHタイプの酵素であり、2)暗期に誘導を開始すると、明期に開始した場合の2倍のNAD(P)H酵素および1.4倍のNADH酵素が初めの12時間の間に根部で生成され、3)茎葉部のNADH酵素は誘導の後期(24ー36時間)では、暗期の場合に含量が低下する、などが判った。また、前年度のin vivo硝酸還元量との対比から、誘導初期では根部の両酵素は最大活性に近い速度で機能しているが、誘導後期ではそうではないこと、茎葉部のNADH酵素は、暗期ではその機能発現が強く抑えられていること、などから、根部での硝酸還元は、夜間や硝酸塩供給直後などの茎葉部での硝酸還元が弱いときに、そこへ還元態窒素を供給するのに重量であると考えられる。
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