研究概要 |
昆虫の神経活性物質として発見されたLーロイシン及びオクトバミンをリ-ド化合物として、五員環状リン化合物2ーメトキシー1,3,2ーオキシアザホスホリジン 2ースルフィドの4ーイソブチル(iBMOS)及び5ーフェニル(5ーPMOS)誘導体等を分子設計・合成した。これらをコクヌストモドキとイエバエの幼虫に致死量以下で摂食させたところ、生育・蛹化・羽化を抑制した。同時にトレハラ-ゼ活性の抑制とcAMPの体内レベル増加が認められた。しかし、in vitroでのトレハラ-ゼ阻害活性はない。一方、オクトパミン作用を示す殺虫剤クロロジメフォルム及びアデニレ-トシクラ-ゼ活性化作用を有するフォルスコリンはcAMPの増大をもたらしたがトレハラ-ゼ活性の抑制を示さなかった。 六員環状リン酸エステルであるサリチオンの純粋な光学活性体を合成した。(R)(+)サリチオンは(S)(ー)体よりコクヌストモドキの幼虫生育・蛹化・羽化を10倍以上強く抑制した。両光学異性体の幼虫生育抑制活性はin vivoでのトレハラ-ゼ抑制活性と相関した。なお、サリチオンはin vitroでトレハラ-ゼを阻害しない。一方、関連するサリゲニン環状リン酸エステルがグルタチオンと非酵素的に反応して生じるS-(oーヒドロキシベンジル)グルタチオンがグルタチオンと競合してグルタチオン転移酵素活性を阻害することが分かった。 また、抑制性神経伝達物質γーアミノ酪酸(GABA)の作用に拮抗する架橋二環式リン酸エステル(2,6,7ーtrioxa-1-phosphabicyclo[2.2.2]octane)の昆虫への選択性が期待される2ーチオノー3ー置換ー4ーnープロピル誘導体と体内での代謝変換を期待し、プロ型の単環式リン酸エステルを合成した。 なお、抗昆虫幼若ホルモン活性物質として分子設計して得た(1′E)ーNーベンジルー5ー(2′,6′ージメチルー1′,5′ーヘプタジエニル)イミダソ-ル(KK-42)がSarcophaga bullataの変態前に致死作用を示した。
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