研究概要 |
マツの乾燥休眠種子の胚にはmRNAが存在している。前年度までに,これらの貯蔵型mRNAからcDNAを作成し,発芽過程に消失する貯蔵型mRNAのcDNAクロ-ンとして,pPS1,pPS5,pPS13を得ている. 本年度は,7年間および14年間乾燥貯蔵したクロマツ種子を用いて,貯蔵型mRNAが極めて長期間維持されていることを明らかにした。上記のcDNAクロ-ンをプロ-ブとして,種子胚から抽出したRNAとノ-ザンハイブリダイゼ-ションをおこなった。新しい種子と同様に古い種子でもcDNAと対合する分画が認められ,mRNAが貯蔵されていることが示唆された。次いで,長期間貯蔵されているmRNAがどこに存在するかを調べた。蔗糖密度勾配遠心法によってリボソ-ム画分を分画し,沈降係数の異なる分画からそれぞれRNAを抽出し,上記のcDNAクロ-ンをプロ-ブとしてノ-ザンハイブリダイゼ-ションをおこなった。その結果,沈降係数の大きいポリソ-ム画分(〉80S)に貯蔵型mRNAが存在することが明らかになった。遊離状態の貯蔵型mRNAの沈降係数は10S前後であり,リボソ-ムが結合しているためポリソ-ム画分に存在している可能性が考えられる。そこで,ピュ-ロマイシンによって,mRNAからリボソ-ムを解離させる処理をおこなったところ,貯蔵型mRNAは沈降係数がおよそ45Sの画分に移行した。この結果から,貯蔵型mRNAにはリボソ-ムの他にも何らかの分子が結合していることが明らかになった。この結合した状態で,翻訳活性があるかを調べるため,ウサギ網状赤血球ライセ-トを用いて,<in>___ー <vitro>___ーの翻訳実験をおこなった。この<in>___ー <vitro>___ーの系にオ-リントリカルボン酸を加え,新しい翻訳開始を阻害すると,貯蔵型mRNAのポリソ-ム画分は翻訳を進行させずアミノ酸の取り込みをおこなわない。一方、正常なポリソ-ムは翻訳を進行させる。したがって,貯蔵型mRNAは鋳型活性が抑えられた状態で維持されていると思われる。
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