研究課題/領域番号 |
63480066
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 正 東北大学, 農学部, 教授 (70005594)
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研究分担者 |
今島 実 国立科学博物館, 動物研究部, 部長 (30000110)
尾定 誠 東北大学, 農学部, 助手 (30177208)
松谷 武成 東北大学, 農学部, 助手 (90134030)
菅原 義雄 東北大学, 農学部, 助教授 (20005614)
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キーワード | ポリドマ / マダラスピオ / 性成熟 / 産卵 / 穿孔 |
研究概要 |
北海道網走海域のホタテガイに穿孔するポリドラ属のうちマダラスピオPolydora variegataについて生殖と穿孔機構について研究を行った結果、次のような知見を得た。 1.性成熟過程を組織学的に検討した結果、腹部対腔上皮に由来する卵母細胞は卵巣内で血液と対腔液から栄養の補給を受け、130-140μmまで生長した後産卵されること、しかも5月から12月至る観察期間中を通じて、卵巣内には若い卵母細胞が認められ、生殖期間内に複数回の産卵が行われる可能性が示唆された。そして、産卵後、二枚貝や棘皮動物などで観察されるような顕著な卵母細胞の再吸収像を認められなかった。また、生殖母細胞は、雌雄ともに17-19剛毛節の体腔よりみられ、1年群(0^+)では第40-50剛毛節まで、2年群(1^+)では50-70剛毛節までみられた。 2.卵嚢は、0^+では8、9月にみられ、1^+では5-12月を通じてみられたが、とくに8、9月に多くみられた。これらの卵嚢はいくつものカプセルに分かれており、0^+群では1卵嚢中に8-23のカプセル、平均15のカプセルを有していた。また、1カプセル内には32-58、平均42の卵が認められた。1群では1卵嚢内に10-45のカプセル(平均25)、1カプセル内に46-158の卵(平均98)が認められた。これらカプセル内の受精卵は不等全割、螺旋卵割をし、約320μmの3剛毛節幼生まで発育した。ここで、卵嚢より泳出し、第17剛毛節幼生まで浮遊生活を送り、体長1,350μmまで生長したが、定着・変態させることは出来なかった。 3.ホタテガイの貝殻は閉殻筋付着部を除いて広く葉状構造で構成されているが、マダラスピオの孔道はこの構造に対して平行に筋状に削り取られていた。孔道の内面には、マダラスピオが分泌したと考えられる粘液物質やホタテガイの分泌したと考えられる膜状物質などが観察され、穿孔機構の解明上、重要な手掛りが得られた。
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