研究概要 |
3カ年の研究計画の最終年度にあたる本年は,ウナギ目およびサケ目魚類に関する変態の典型の解析を中心に研究をおこなうとともに,本研究目的である変態機構と生残への適応についての全般的な検討をおこなった。成果の大要は以下の通りである。 (1)レプトセファルス型変態をおこなうことで特異な変態様式と有するカライワシ上目カライワシ目イセゴイに関する変態過程の詳細な形態学的研究により,従来見落されていた変態期として体長収縮後の成長停滞期の存在が明らかになり,この段階の長短によって変態様式が大きく変化することが示唆された。本種では変態に関与する甲状腺ホルモンの放出が変態時に2分されることをはじめ,変態現象が発育様式の不連続的な転換を意味し,生残への適応的側面を強く示すことが判明した。 (2)サケ目ニギス亜目魚類の変態現象に関しては,生息環境を異にするニギス科,ソコイワシ科,デメニギス科,ギンザケイワシ科についての知見を比較検討した結果,変態前後の発育段階の生息域の生産力と強く関連した適応属性が認められた。特に亜表層から中・深層へと生息域を移行させるソコイワシ科において最も顕著な変態がおこなわれることが明らかとなり,その意義についても多くの示唆が得られた。 (3)変態に関する全般的な考察をおこなった結果,魚類の変態は非直遠発遠型の要素には全て存在すること,そして発育段階との関係では仔魚期から稚魚期の移行段階に該当すること,変態の起源を大型沈性卵を有する魚種,例えばハタハタ,に求めることが可能であることなどが明らかとなった。変態とはとりもなおさず,魚類の主要な発育様式の中に位置づけられるものであり,より広い視点と,より多面的なアプロ-チによって今後の研究がすすめられねばならない課題といえよう。
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