研究概要 |
本邦沿岸域に赤潮として出現する15種の鞭毛藻類(過鞭毛藻8種、ラフィド藻類4種、プラシノ藻類2種、ミドリムシ藻類1種)を、2種のカイアシ類(Pseudodiaptomus marinus,Acartia omorii)に摂食させることにより、これらの赤潮鞭毛藻類中に拒食性の種類が存在するかどうかを調査し、次のような結果を得た。 1.ラフィド藻類のOlisthodiscus Luteusを与えた場合、P.marinusの排糞速度、生残率、卵のう保有率の総てが非常に低く、本種はP.marinusにはほとんど摂食されない拒食性の鞭毛藻類であることが判明した。また渦鞭毛藻類のGymnodinium nagasakiense、ラフィド藻類のHeterosigma akashiwo,Chattonella marina,Fibrocapsa,japonicaも拒食される傾向があった。しかしその他の鞭毛藻類は活発に摂食された。また、A.omoriiの排糞速度、生残率、産卵速度はG.nagasakiense,H.akashiwo,C.marina,F.japonicaを与えた場合に特に低く、これらの鞭毛藻類はA.omoriiにとって拒食性を示すことが判明した。その他の鞭毛藻類は活発に摂食された。以上の結果から、本邦に出現する赤潮鞭毛藻類の中にカイアシ類に拒食される種類が存在することが初めて明らかになった。 2.正常に摂食された種類と拒食された種類との間に、細胞の形態、サイズなどの違いがないことから、カイアシ類に拒食される原因は鞭毛藻類によって産生される化学物質によるのではないかと思われたので、正常に摂食されるHeterocapsa tiqyetraをコントロールとして摂食実験を行った。その結果、O.luteus,G.nagasakienseはそれらの細胞内に拒食誘発物質を含有することが明らかとなり、その物質は80℃以上に加熱すると拒食効果が減少し、20℃で12時間以上放置すると失活する短命な生理活性物質であった。 今後は拒食行動のより詳細な観察を行う予定である。
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