研究概要 |
1.薬物代謝酵素活性 ブリ,マダイ,アユ,ウナギ,コイ,ニジマス,ティラピアの各肝臓を細胞分画し、そのミクロソームとシトゾル画分を供試し、各薬物代謝酵素活性とそのpH・温度特性を比較検討した。 (1)pH・温度特性:各酵素の最適温度は冷水性魚で25〜30℃、温水性魚で30〜40℃、熱帯性魚で40〜45℃の範囲にあり、各生息適水温を反映する結果を得たが、最適pHについては明確な傾向を認めなかった。 (2)酵素活性:シトクロムP-450含量はコイ>ティラピア>ウナギ>ニジマス>マダイ、ブリ》アユの順に減少した。水酸化酵素の活性はブリ>ティラピア>マダイ、ウナギ>ニジマス>コイ、アユ;硫酸抱合酵素の活性はマダイ>ニジマス》ブリ、ウナギ>コイ》ティラピア>アユ;グルタチオン抱合酵素の活性はティラピア》マダイ、ウナギ》ニジマス、ブリ>コイ》アユの順に低下した。グルクロン酸抱合酵素活性は供試魚種のうち、ニジマスとウナギにのみ認められ、他魚種では検出限界以下であった。以上の各活性はラットに比べて著しく低かったが、エステラーゼの活性はラットと同レベルであり、魚種間の差は小さかった。 2.医薬品の定量法 マダイの肝臓、腎臓、筋肉および血液を試料とし、オキソリン酸、オキシテトラサイクリン、チアンフェニコールの各2ppmを添加し、HPLC(東ソー)を使用してそれぞれ回収試験を行った。 (1)オキソリン酸:回収率は肝、腎、筋、血でいずれも70〜82%であり、検出限界は2ngであった。ただ、腎臓では妨害ピークが現われ、検出限界は約20ngであった。 (2)オキシテトラサイクリン:検出限界は2ngであり、水溶液からの回収率を100%とした場合、肝で68%と低かったが、他の組織では80〜90%であった。 (3)チアンフェニコール:検出限界は1ngであったが、回収率は血液で96%と高かったものの、肝臓と筋肉では65%、腎臓では52%と低く、今後再検討が必要である。
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