(1) 投与医薬品の魚体内残留性と薬物代謝酵素活性との関連性 コイ、アユ、ニジマス、マダイ、ブリおよびPCBを投与して薬物酸化酵素活性を誘導させたコイを用い、各供試魚にオキソリン酸(OA)20mg、塩酸オキシテトラサイクリン(OTC)およびチアンフェニコ-ル(TP)各50mg/kgb.w.を1回強制経口投与し、それらの筋肉、肝臓、腎臓、血液中濃度の経時的変化を調べた。また、供試魚肝臓の薬物代謝酵素活性を測定し、残留性との関連性について検討した。OAでは、すべての魚種で腎臓が最も高く、腎臓における最高濃度到達時間と生物学的半減期は、供試魚の水酸化酵素(AHH)活性と逆相関を示し、活性が最も高かったブリで最も短く、次いでマダイ、アユ、コイ、ニジマスの順に長くなった。OTCではすべての魚種で肝臓が最高濃度を示し、肝臓における生物学的半減期はコイ、アユで短く、マダイ、ニジマスの順であったが、酵素活性との関連性は認められなかった。TPにおいては組織間に明瞭な差はなく、代謝酵素活性との関連も認められなかった。またPCB処理によってAHH活性が17倍に誘導されたコイでは、OAの体内濃度が対照魚に比べて約1/3に減少し、最高濃度到達時間は26時間から12時間に短縮された。しかし、OTCとTPではその差は認められず、AHH活性は両薬剤の排出に関与しないと考えられる。すなわち、AHH活性はOAの排出に深く関与しており、この活性値からOAの残留性を予測する可能性を示唆する。 (2) ニジマス肝臓の薬物代謝酵素活性の季節的変化 昨年度から継続して、ニジマスの薬物代謝酵素活性の成長および季節的変動について検討した結果、AHHと硫酸抱合酵素の活性は、季節により最大3〜4倍変動することが明らかになり、これらの酵素活性の変動により薬剤の魚体内保持期間が変化し、画一的な医薬品の投与には、その治療効果や食品の安全性の点で問題があることを示唆している。
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