研究概要 |
(1)魚類の薬物代謝酵素活性と投与医薬品の体内持続性との関連性 昨年度に実施できなかったブリに対するチアンフェニコ-ル(TP)とオキシテトラサイクリン(OTC)投与実験を行った。ブリに両薬剤をそれぞれ50mg/kg体重の割合で1回強制経口投与し,筋肉,肝臓,腎臓,血液中濃度の経時的変化を調べるとともに,コイ,アユ,ニジマス,マダイにおける両薬剤の残留性とそれらの薬物代謝酵素活性との関連性を比較検討した。ブリにおけるTP最高濃度およびその到達時間はマダイと同レベルであり,アユ,コイにおけるそれらの1/2〜1/3であり,薬物水酸化酵素(AHH)とグルクロン酸抱合酵素(GT)の活性を反映する傾向は認められたが,オキソリン酸(OA)の場合に比べるとその相関はかなり 低かった。OTCについては,ブリにおいて最高濃度到達時間が他の魚種に比べて短かく,排出も速やかであったが,最高濃度と薬物代謝酵素活性との関に相関は認められず,これは本薬剤が酵素作用を受け難いためと考えられた。 (2)医薬品投与による薬物代謝酵素活性の誘導 合成抗菌剤6種と抗生物質8種の各適量を添加した飼料をマダイに12日間投与した後,肝臓の各薬物代謝素活性を測定した。供試医薬品によるマダイの薬物代謝酵素活性の誘導は,スルフィソゾ-ル,スルファモノメトキシン,オキソリン酸などによって約4倍誘導された硫酸抱合酸素を除いては,いずれもそれ程大きいものでなく,コイにおけるPCBや3ーメチルコラントレンによる誘導に比べれは著しく低レベルであった。しかしながら,AHHの活性はキタサマシンやニフルスチレン酸などによって明らかに誘導され,これら医薬品を長期間投与すると,投与薬剤の排出を促進し,薬効の低下を招く懼れがあることが示唆された。
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