研究概要 |
棟開放牛舎を供試し、夏期における自然換気特性を測定するとともに、昨年度の冬期に行った岩手県滝沢村の3乳牛舎における換気の実態調査について夏期にも実施し、冬期の測定値と比較検討した。 供試牛舎(間口8.4m、奥行き10.8m、棟高4.8m、容積350m^3)の棟開口部には、換気効果を高めるため幅0.15m,高さ0.3mの立ち上げを垂直に設置した。木枠に電熱線を巻いた牛体発熱モデルを舎内に設置し12頭分の成牛に相当する顕熱量を発生させ,浮力の要因とした。換気量の増大を図るため側壁を開放可能とした。棟・軒下の開口部を開き側壁開口部を閉じた状態(I型)、棟・軒下開口部と側壁開口部をともに開放した状態(II型)の2種の換気状態を設定し気流分布,換気回数,熱環境をそれぞれ調べた。測定期間は1990年7月ー9月である。外気平均風速が0.5m/sから5m/s範囲において、風速が増すにつれ各開口部の換気回数はI型、II型ともに直線的に増加した。I型の棟開口部では軒下開口部の約2倍の換気回数が得られた。II型では全開口部の換気回数のうち側壁開口部によるものが約50%を占めた。軒下開口部の換気回数はI型とII型で差がなかった。全開口部の換気回数をみると,I型は夏期に必要な最低換気回数20回/hrに達しなかった。一方II型は外気風速が1.5ms以上で20回/hr以上の換気回数が得られ、側壁の開放による換気効果が大きいことがわかった。しかし、微風時においては、側壁を開放しても空気の淀みが観察され、換気が不十分となる恐れがある。自然換気型2箇所、閉鎖型1箇の計3乳牛舎についてアンモニアガス濃度、空中浮遊細菌数などを8月に測定した。閉鎖型牛舎はアンモニアガス濃度の平均値が冬期の値に比し約1/8と著しく減少した。これは酷暑対策として換気扇を導入し通風を改善したためである。他の2牛舎のアンモニアガス濃度や空中浮遊細菌数の値は冬期に比しいずれも変化が少なく換気状態は良好であった。
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