研究概要 |
寒冷地における牛舎の換気法の確立を目的とし、牛のエネルギ-代謝,牛舎の気流分布、換気回数の観点から適切な換気方式を検討した。 日本短角種成雌牛6頭を簡易牛舎内に係留し、マスク法により冬期における牛の熱生産量の変化を測定した。測定期間は1988年11月ー12月である。舎内気温が+5℃から-5℃に低下しても供試牛の熱生産量の増加は認められなかった。この温度範囲は、牛にとって熱的中性圏にあり快適な温度帯と推定された。このため、牛舎の換気方式として、低コスト化の観点から、自然換気方式が望ましいと判断した。そこで、現地調査および内外の報文をもとに、自然換気方式のうち、風雪流入防止効果の高い棟開放牛舎に注目し、その換気特性を冬期および夏期について測定した。簡易牛舎(間口8.4m,奥行き10.8m,棟高4.8m,容積350m^3)を供試し、0.15m幅の連続した棟開口部に高さ0.3mの立ち上げを設けた。そしてそれを垂直に立てた場合、上部の開口幅を半減した場合、立ち上げがない場合の3状態における換気回数を冬期において測定した。入気口は幅0.12mの軒下開口部のみとし、浮力の要因として、前年度に測定した牛の熱生産量より、成牛12頭分に相当する顕熱量を電熱線で発生させた。実験の結果、立ち上げを垂直に設けることにより、無風時でも冬期の必要最低換気回数4回/hrを維持でき、さらにそれは風雪の逆流防止効果が高いことがわかった。夏期においては、棟開放牛舎における棟開口部や軒下開口部の換気効果は少なく、側壁を開放することで必要換気回数20回/hrを得られることが判明した。しかし、無風の酷暑時には、側壁を開放しても換気が不十分となることがわかり、このような気象条件では、換気扇による牛体送風を併用する必要があることを指摘した。なお、棟開放牛舎における棟の開口幅が換気回数に及ぼす影響の解明、強風地帯における棟開放牛舎の風雪流入防止策の改善などが残された課題である。
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