前年度の研究で、家兎毛様体突起の虹彩部と覆う上皮に分布する上皮内神経線維の存在を明らかにした。支質から上皮内に侵入した神経線維は外層の色素上皮細胞間を走り、走行中の処々で球状の膨大部をつくり、全体として珠数状を呈している。この膨大部内には神経細管、神経細糸、小糸粒体がみられる他に、2種類の小胞が観察された。すなわち径約50nmの明小胞と径約80nmの有芯小胞である。 今年度はこの小胞の性質をより正確にするため、アドレナリン作働神経線維に選択的に取込まれる偽神経伝達物質5ー水酸化ドパミンを家兎眼結膜下に投与し、一定時間後に標本を作製して電子顕微鏡で観察した。 その結果、上皮内神経線維に含まれる大型有芯小胞の他に、小型の明小胞の多くが有芯化することが明らかとなった。また、観察された限りでの上皮内神経線維のすべてに、このような小型有芯小胞が認められた。このことから家兎毛様体上皮に分布する神経線維はノルアドレナリン作働性であると結論された。 つぎに、家兎では眼房水の流量と眼圧には日周期による変動があることが知られている。そこで、家兎を12時間明、12時間暗の周期に慣らした後、眼圧最高期と最低期に眼球をそれぞれ摘出し、毛様体突起の形態の変化を電子顕微鏡的に検討した。観察はなお継続中であるが、現在までに得られた結果によると、支質ならびに毛様体上皮の形態に両者の間に明らかな相違が認められている。このことから、眼房水の産生とその調節機構について、何等かの示唆が得られることを期待している。
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