研究概要 |
実験動物として主に家兎を使用し、その眼毛様体上皮のうち眼房水産生の最も活発と考えられる虹彩部突起について、種々の電子顕微鏡的手法を用いて観察した。 1.毛様体上皮は無色素上皮細胞(NPE)と色素上皮細胞(PE)からなるそれぞれの層がその頂上側を対向させて結合した2層から構成されている。上皮内通路ciliary channelがその間にみられ、上皮細胞相互間には多数のデスモゾ-ム,細隙結合が存在する他、NPEの間には閉鎖結合も認められる。NPE,PE共、その基底外側面は複雑かつ深い陥入を示し、その部の細胞膜には豊富な膜内粒子が観察され機能的な活動性を示している。2.毛様体上皮に上皮内神経線維が観察された。PE細胞間を走り、珠数状を呈し、大小の小胞を含んでいた。5´ーhydroxydopamine投与によって小型小胞の多くが有芯化し、この神経線維がノルアドレナリン作働性であることが確かめられた。3.毛様体上皮の日周期による形態変化。家兎の眼圧は明時において低く、暗時において高い。形態的には明時の毛様体突起は、浮腫状の支質、開大したciliary channel,PEの基底外側面の細胞間隙の開離を示しており、実験的にforskolin点眼によって眼圧低下させた時の突起の形態変化に類似していた。これらの所見は眼圧の低下が眼房水の吸収によることを示唆している。4.毛様体上皮を2層のまま分離することに成功した。摘出眼球のコラゲナ-ゼ潅流法を基本としているが、多くの試行と工夫が必要であった。分離した上皮層は生体時の構造を維持していることが電顕的に確かめられた。分離新鮮上皮にNa/KーATPase抗体を作用させ免疫組織化学的にこの酵素の局在を電顕的にしらべた結果、PEとNPEの基底外側面細胞膜に陽性であることが証明された。
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