1)脊髄反射路の機能が開始する胎生16.5日以降の標本を用いて、腰髄運動ニューロンから細胞内記録を行い、後根刺激によって誘発されるシナプス後効果について解析した。胎生16.5日の標本において記録した運動ニューロンの内、興奮性シナプス後電位(EPSP)は約70%に、一方、抑制性シナプス後電位(IPSP)は50%に認められた。EPSPおよびIPSPの出現頻度は日齢とともに増加し、出生時(胎生21.5日)にはすべての運動ニューロンで両効果が観察された。以上の結果から、反射回路における抑制性伝達路は興奮性の伝達路と同じ胎生16.5日以降に機能を開始することが明らかにされた。 2)いずれの日齢でも個々のニューロンにおける後根神経の刺激効果は興奮、または、興奮と抑制の混合型であり、純粋な抑制効果のみが出現することはなかった。このことから抑制路は興奮路より遅れて発達することが示唆された。 3)胎生20.5日以降の標本を用いて大腿四頭筋支配の運動ニューロンから細胞内誘導を行い、各種の末梢神経の刺激効果を解析した。その結果、大腿二頭筋からの拮抗抑制の機能は胎生期にすでに出現していることが明らかにされた。また皮膚神経や混合神経から伸筋運動ニューロンへの抑制効果の出現頻度は新生ラットの標本において有意に増加していた。従って、複数の介在ニューロンを介する多シナプス性の抑制路の機能分化は出生後にも継続していると結論された。
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