研究概要 |
前年度Forel野(FFH)ニュ-ロンが頚筋運動ニュ-ロンに直接及び橋・延髄の網様体脊髄路細胞を介して2シナプス性に結合することを明らかにした。この結合は頭挙上筋に特異的であった。本年度はFFHニュ-ロンの機能を調べるため頚指向運動を行うように訓練した猫のFFHにカイニン酸を微量注入しこの部の細胞のみを選択的に破壊して、運動障害を調べた。猫はperimeterの前に立つように訓練した。perimeterには水平に7個、垂直方向に12個の赤外線発光ダイオ-ド(LED)が取り付けてあり、中央のLEDが点灯すると猫はこれを注視した。中央のLEDが消え即座に他の周辺のLEDが点灯すると猫はこれに向かって頭を動かし注視する。この時の眼球運動(EOG)、頚筋筋電図、Sel spot systemにより頭の動きを同時に記録し解析した。垂直性頚運動は頚と体幹の接合部での回転運動(neck rotation)、atolanto-occpital joint付近での回転運動(head rotation)、おもに前肢による頭の平行運動(parallel shift)の3種類に大別された。頚指向運動では頭挙上筋のburst発火、垂直方向のsaccadeは頭の動きにそれぞれ約100ms、10-20ms先行した。頭の最大角速度と回転角は正の相関を示しそのslopeは10deg/sec/degであった。両側のFFHにカイニン酸を微量注入すると、注入後10分内に両側の頭挙上筋、体幹筋の活動が増大し始め、頭、体幹は直線状になった。注入後約1日で頚、体幹筋のト-ヌスは低下し、頭は下がったままとなった。注入後3回以内に筋ト-ヌスも正常に戻り、頭を挙上し正常な位置に保てるようになった。垂直方向への頚指向運動、saccadeは完全に消失したが、水平方向の指向運動は全く正常であった。その後垂直性頚指向運動は主にparallel shiftで補償されたが、vertical saccade,head rotation,neck rotationは消失したままであった。以上よりFFHが垂直頚指向運動、特に回転運動成分のpremoter centerであることがわかった。
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