Forel野(FFH)ニュ-ロンと頸筋運動ニュ-ロンの結合様式、FFHの頸運動における役割を調べ以下の結果を得た。FFHニュ-ロンの大部分は橋・延髄網様体に投射した。このうち約半数が上部頸髄(C1-C3)に投射し、このうち更に約20%は下部頸髄(C7)に投射した。FFHニュ-ロンは頸筋運動ニュ-ロンに直接及び橋・延髄の網様体脊髄路細胞を介して2シナプス性に興奮結合し、この結合は頭挙上筋に特異的であった。以下の頸指向運動を行うように訓練した猫のFFHにカイニン酸を微量注入しこの部の細胞のみを選択的に破壊して、運動障害を調べた。猫はperimeterの前に立つように訓練した。perimeterには水平に7個、垂直方向に12個の赤外線発光ダイオ-ド(LED)が取り付けてあり、中央のLEDが点灯すると猫はこれを注視する。中央のLEDが消え即座に他の周辺のLEDが点灯すると猫はこれに向かって頭を動かし注視する。この時の眼球運動(EOG)、頸筋筋電図、Sel spot systemにより頭の動きを同時に記録し解析した。垂直性筋運動は頸と体幹の接合部での回転運動(neck rotaion)、atolanto-occipital joint付近での回転運動(head rotation)、おもに前肢による頭の平行運動(parallel shift)の3種類に大別された。頭の最大角速度と回転角は正の相関を示しそのslopeは10deg/sec/degであった。両側のFFHにカイニン酸を微量注入すると、両側の頭挙上筋、体幹筋の著名な活動の増大(興奮性作用)が10〜20時間持続した。その後、体幹筋のト-ヌスは低下し、頭は下がったままとなった。約3日後には筋ト-ヌスも正常に戻り、頭を挙上し正常な位置に保てるようになった。垂直方向への頸指向運動、saccadeは完全に消失したが水平方向の頸運動は全く正常であった。その後垂直性指向運動は主にparallel shiftで補償されたが回転運動成分は障害されたままであった。以上よりFFHが垂直頸指向運動のpremoter centerであることがわかった。
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