研究概要 |
Kimuraら(1986,1987)の報告したNa^+及びCa^<2+>感受性電流の逆転電位を測定することによって、この電流がNa-Ca交換機転に基づくとする仮説を検証し、Na^+とCa^<2+>の交換比率(stoicheiometry)を決定することができた。モルモットの単一心室筋細胞にwhole-cell膜電位固定法と細胞内潅流法を適用し、広い範囲の外液Na^+,Ca^<2+>濃度で誘発される電流を記録した。阻害剤であるNi^<2+>存在下、非存在下の電流電圧曲線の交点より逆転電位を測定した。細胞内液のCa濃度〔Ca〕iはEGTAあるいはBAPTAで調整した。細胞内液のNa^+濃度(〔Na〕i)を10mM、〔Ca〕iを153nM、外液のNa^+濃度(〔Na〕o)を140mMとし、〔Ca〕oを0.1mMから1-20mMに増加すると、+38mVの保持電位でCa濃度依存性に外向き電流が発生するが、この電流は時間依存性に減衰し、それにともなって逆転電位も変化した。この変化は細胞内のCa^<2+>の蓄積とNa^+の減少によることが示唆されたので、持続的なイオンフラックスを抑制する目的で、Na-Ca交換機転を活性化する場合に、保持電位を3Na:1Caの交換比率で与えられる平衡電位にした。逆転電位の値は、外液Ca^<2+>0.5-20mMの範囲で理論上の平衡電位とよく一致した。〔Ca〕iが153nMでは、逆転電位より負電位側で見られる内向き電流の増加が多くの実験で顕著でなかった。内向き電流に対する細胞内Ca^<2+>の閾値が150nMあたりにあることが予想された。一定細胞内液潅流下に、〔Ca〕oを一定にした状態で〔Na〕oを増加し、Na-Ca交換による主として内向き電流を記録する実験についても同様な方法で、逆転電位の測定を行った。それらは外液Na^+30-140mMの範囲で理論上の平衡電位とよく一致した。以上の結果に基づいて、我々は外液CaやNaによって誘発された電流は確かにNa-Ca交換機転に基づく電流であり、交換比率は3Na:1Caであると結論した。
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