1.網膜グリア細胞であるミュラ-細胞のグルタミン酸キャリア-の性質を解析した。グルタミン酸(あるいはアスパラギン酸)が細胞内に取り込まれる際に移動するイオンとしては、Na^+・K^+・H^+・Cl^-が考えられる。蛍光プロ-ブを使って検討したところ、Na^+のみがグルタミン酸と共輸送されることが判明した。グルタミン酸1分子とNa^+3分子が細胞外からキャリア-に結合すると細胞内にグルタミン酸が流入した。この現象は電流の発生を伴い、電流振幅は膜を過分極させると指数関数的に増大した。電流-電圧曲線の形はグルタミン酸の濃度には依存せず、また、温度依存性は低かった(Q_<10>=1.95)。グルタミン酸流入の反応速度定数は10^3/秒よりも大きかった。一方、脱分極によって細胞内からグルタミン酸が流出する場合には、グルタミン酸1分子とNa^+1分子が共輸送されるため、電流を発生しなかった。以上の結果から、ミュラ-細胞のグルタミン酸キャリア-はこれ迄に提唱されている輸送タンパクのモデルとは異なり、むしろ開状態に凍結されたイオンチャネルのような性質を持っていると考えられる。 2.グルタミン酸の検出方法を確立した。アメリカナマズの網膜からタンパク質分解酵素を使って単離した水平細胞をパッチ電極で膜電位固定することで、電気生理学的にグルタミン酸のバイオアッセイに使用することが出来た。この方法で約1μM弱のグルタミン酸を検出することができる。グルタミン酸を放出すると考えられいる単離神経細胞をアメリカナマズの水平細胞に密着させた状態で、それぞれの細胞を電位固定し膜電流を同時記録した。神経細胞を脱分極させると水平細胞で応答を観察することができた。現在、この応答の性質および神経細胞のCa電流との関係を解析している。
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