予定通り、本年度に計画していた研究の大半を実施終了することが出来た。 1.ラットの心臓を摘出し、KRBSEK液、コラゲナーゼ、牛血清を用いて自動拍動する分離単一心筋細胞標本を作製に成功し、分離単一心筋細胞を用いて心筋機能を細胞レベルで研究可能となった。 2.1の単一心筋細胞内のpHの定量的測定方法を確立することが出来た。即ち、pH感受性螢光色素である、2'、7'-bis(2-carboxy-fluorescein、acetooxymethy1 eater(BCECF-AM)を細胞内に導入させ、顕微測光システム(浜松フォトニクス-本科研費にて購入)を用いて二つの励起波長(500nmと440nm)での螢光強度の比を取り、あらかじめ求めておいてpHと螢光強度の比との関係を示す検量曲線から、実際のpHが求まる。この方法を確立した。 3.細胞外に種々の濃度のCO_2ガスの注入、ならびに細胞外溶液を静かに潅流させ、酸性溶液に交換することにより、それぞれ呼吸性アシドーしす、代謝性アシドーシス時の細胞内pHの変動とその程度をこの方法により測定可能となり、CO_2、lactate投与時のpH変動を測定した。 4.心筋に含まれるミオグロビン溶液での、CO_2ならびにO_2の拡散速度を測定する方法を開発し、その値を求めることができた。さらに、ミオグロビン溶液の緩衝能の値も得ることができた。 5.この顕微測光システムは細胞内Ca^<++>濃度の測定も可能なので、細胞内pH測定とともに細胞内Ca^<++>濃度の測定もする予定である。pHと細胞内Ca^<++>濃度の同時測定は、心筋細胞機能に関する多大の情報を提供するもので、酸塩基平衡と収縮能との関連の解明に大きく寄与するものである。
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