納入された赤外線照射装置は多少改良を要し、9月に入って使用可能となった。また前実験の過程で、実験手技の細部についての改良に手間取ったが、その後精力的に実験を進め、まだ結論的な成果を得るには至っていないが、いくつかの示唆的な実験データが得られた。すなわち、異なった波長の赤外線を種々のプログラムで照射し、その間深部体温及び皮膚温(サーミスタ温度計による)、皮膚温度分布(サーモグラフを用いる)、皮膚血流量(レーザードップラー血流計による)、局所発刊量(高感度容量湿度計を用いた乾気カプセル法による)、全身発刊量(Potter社製Bed Balanceによる体重減少)を連続記録してそれらし変動パターンを比較観察し、次のような結果を得た。1.一定室温(20〜30°Cで、被検者の遠赤外線を照射した場合、一定高室温(38〜42°C)に急激に暴露した場合と比べ、皮膚温上昇、発刊反応、皮膚血流増大が迅速で、照射開始直後に反応が始まり、照射の経過注深部体温の上昇が遅いのとは対照的に発刊量が早期にほぼ定常置に達し、その後の動揺が少ないことが認められた。また照射停止後の反応も、室温急冷後の反応より迅速であった。とくに腹・背両面に照射した場合に、一方の面のみに照射した場合より反応が著明であった。2.近赤外線、遠赤外線、超赤外線の相当量(有効放射温度による)を背面または腹面に周期的に照射(2分照射、2分遮断)した場合の反応を比較すると、波長により照射面・非照射面の反応量に多少の差を生ずる傾向が観察されたが、現時点では確定し得るに至っていない(データ処理中)。3.照射部位では非照射部位より、当然ながら発刊反応が大きかったが、そのパターンに著しい相違はみられなかった。3.頭部・顔面を除く照射では、頭部を含む照射に比し、周期的照射では反応に差はなく、持続照射でも鼓膜温の上昇がさらに遅延し、温熱感が軽減したが、発刊反応量に著差はなかった。
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