14週齢のラットで無麻酔・無拘束の状態において慢性に植え込んだカテ-テルを介して血圧の絶対値を測定し、1.アンジオテンシンII(ATII)100ngの脳室内、10ngの視索前野投与で、著明な血圧上昇が出現し、本作用は、WistarーKyotoラット(WKY)に比べ高血圧自然発症ラット(SHR)で強い。この血圧上昇は、心房性利尿ホルモン(αーhANP)の200または500ngの視索前野への前投与によって、SHRでは著明に抑制され、WKYでは抑制されなかった。2.またATII100ngの脳室内投与による昇圧は、αーhANPの200または500ngの後部視床下部への前投与によっても著明に抑制され、本抑制はSHRでとくに強かった。3.さらにSHRにおいて、ATII10ngの視索前野投与による血圧上昇は、αーhANP500ngの後部視床下部への前投与によって著明に抑制された。4.ATII10ngの後部視床下部投与、あるいはαーhAHP500ngの視索前野または後部視床下部への投与では血圧には全く変化は認められなかった。5.結論:ATIIの中枢性昇圧について、視索前野は重要な作用部位で、本部位におけるATIIの反応性はSHRで著しく亢進する。この視索前野において、ANPはATIIの昇圧作用に対して拮抗し、この拮抗もSHRで増強されている。さらにATIIの中枢性昇圧の神経経路として後部視床下部も重要な部位で、本部位においてもANPはATIIの昇圧に拮抗し、この拮抗もSHRで強い。したがって、これら脳内部位におけるATIIおよびANPの反応性の異常、ことにATIIの相応性増強が、高血圧の発症・維持に与かるものと考えられる。
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