研究概要 |
我々は副腎髄質及び神経シナプスのCa^<2+>に依存した伝達物質の放出に関与するCa^<2+>mediator及びその標的蛋白質を明らかにする目的で、ウシ大脳皮質のTriton処理粗シナプス膜分画にCa^<2+>依存に結合する蛋白質を検索し、5種類の蛋白質(分子量68K,38K,34K,32K,17K)を見い出した。このうち17K蛋白質をカルモデュリンと同定し、さらに68K,34K,32K蛋白質を精製した。また、68K蛋白質の特異抗体作成に成功した。精製蛋白質及び特異抗体を用いて、生化学的ならびに免疫的性質を既知のCa^<2+>結合蛋白質と比較検討した結果、68K蛋白質はシビレエイの発電器官で発見され、後に副腎髄質においても存在が証明されたCalelectrinに免疫学的交叉性及び蛋白分解酵素による分解ペプチドパターンが類似していることから、calelectrinの近縁蛋白質であることが示唆されたが、ごく最近CNBr分解フラグメントのシークエンスからリンパ球で見い出された68K蛋白質と同一であることが明らかになった。68K蛋白質はTriton処理脳粗シナプス膜分画にCa^<2+>依存性に結合することから、シナプス膜と相互作用する細胞骨格蛋白質及びその制御蛋白質と結合する可能性が高く現在その実体を検索中である。一方68K蛋白質は副腎髄質のクロマフィン顆粒にもCa^<2+>依存性に結合する。これらの結果から68K蛋白質が脳・副腎でのエクソサイトーシスに重要な役割を果している可能性が示唆され、カルモデュリンの系に加えて、68K蛋白質を始めとするカルモデュリン以外のCa^<2+>結合蛋白質の分子機作及び生理的意義を明らかにすることはエクソサイトーシスのCa^<2+>制御機構の解明につながるものと考えられる。現在、エクソサイトーシスの活発な組織や培養細胞を用いて68K蛋白質の局在を追究する一方、副腎髄質の細胞膜とクロマフィン顆粒にMg^<2+>。ATP存在下でCa^<2+>を加え、カテコールアミンを放出させるin vitro再構成系で68K、34K、32K及びカルモデュリンの影響を検討中である。
|