解糖系律速酵素ピルビン酸キナーゼは哺乳動物ではL型、R型、M_1型、M_2型の4種のアイソザイムが存在し、組織特異的に発現しているが、この発現は分化、発達過程で調節されている。また、L型の肝で発現はインスリンとグルカゴンによって転写レベルで制御されている。これらのアイソザイムは2種類の遺伝子から合成される。すなわち、M_1型とM_2型のmRNAはM遺伝子の転写産物のスプライシングの違いにより、またL型とR型はL遺伝子から転写開始点の違いにより生成する。本研究は、このようなピルビン酸キナーゼ遺伝子の発現の制御機構を分子レベルで解明することを目的とし、今年度は以下の点を明らかにした。 1.L遺伝子からL型とR型の転写を制御するシス作用領域の同定をCATアッセイにより行った。L型の制御領域は転写開始点の上流-185bpまでに存在していた。このうち、-185bpから-152bpまでには正の制御領域が存在し、これは組織特異的発現に係わるエンハンサーとしての機能を有していた。このエンハンサーが働くためには下流にある-94bpからー62bpまでの領域が必要であった。この2つの領域をさらに欠損させて調べると、各々の領域にある約18bpのパリンドローム構造の配列が重要と考えられた。一方、R型の転写制御領域はR型の転写開始点上流-108bpからー79bpまでに存在することが示唆された。 2.1と同様にM遺伝子の転写制御領域を調べた結果、-358bpから-286bpまでに負の制御領域が、-286bpから-68bpまでに正の制御領域が存在することが示唆された。
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