本年度はL型ピルビン酸キナ-ゼ(LPD)の肝細胞特異的発現を制御するシス作用領域とインスリン反応性に関与するシス作用領域の解析を行った。LPK遺伝子のL型の転写開始点を含む上流の種々の断片をCAT遺伝子に結合した融合遺伝子を作製し、肝細胞に導入してCAT活性を測定した。その結果、肝細胞でのL型の発現には少なく共、2ケ所の領域が必要であることが判明した。上流の領域は-170から-126までに存在し、下流の領域は-94から-76までに存在した。これらの領域をそれぞれ、PKL-II、PKL-Iと名づけたが、PKL-IIは逆向きに同種や、異種のプロモ-タ-に結合しても、また位置を変えても有効であった。従って、エンハンサ-としての性質を有すると考えられる。PKL-Iもプロモ-タ-活性を促進したが、両者が共存すると著明な相乗効果が認められた。両領域の活性は肝細胞に比べて、H4IIE細胞ではずっと低く、dRLh84やK562細胞では認められなかった。これらの活性は内因性のLPKmRANレベルを反映した。従って、両領域はLPKの肝細胞での発現に重要な役割を果していると考えられる。PKL-Iは肝特異的転写因子のLF-B1の結合部位と相同性の高い配列を含み、PKL-IIには2つの特徴的な配列が存在した。1つは肝特異的転写因子のLF-Alの結合部位で、もう1つは19塩基からなるパリンドロ-む様配列であった。一方、インスリン反応性領域については、CATの一過性発現にもとづくCATアッセイではLPK遺伝子の転写開始点から上流3.2kbまでに、その存在を認めることはできなかった。しかし、上流3kbまでの断片とのCAT融合遺伝子をもつトランスジェニックマウスを作製して調べたところ、インスリン反応性が認められた。
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