研究概要 |
リソゾームの蛋白分解の主役をなす、リソゾームシステインプロテアーゼ群の細胞内プロセシングを詳細に解析してゆくことは、リソゾーム酵素の細胞内局在化機構の解明につながる重要なアプローチであると考えられる。システインプロテアーゼ群(カテプシンB,H,L)の内Bについてはすでに報告ずみであるが、最近、H,Lのプレプロ部分を含む全一次構造ならびに糖鎖結合状態を核酸レベルと蛋白質レベルから検索し、これらの酵素はいずれもカテプシンDと同様に、プレプロ型前駆体分子として生合成され、その後プロセシングの過程を経て、プロ型、成熟型へと変換することを明らかにした。これらの結果を基礎にして、マクロフィージを用いたパルスーチェイス実験を行い、次のことを明らかにした。カテプシンB,H,LはカテプシンDの場合と同様に、プレプロ型前駆体として合成された後、チェイス1時間後に一本鎖成熟酵素に変換され、さらに一本鎖、Lはすみやかに二本鎖酵素に、又一本鎖B,Hはチェイス6時間後に一本鎖酵素に変換された。又これらのプロセシングの過程におよぼす各種のプロテアーゼインヒビター、メタロプロテアーゼの人工基質の影響を調べたところ、カテプシンB,H,Lいずれの酵素もプロ酵素から成熟一本鎖酵素へのプロセシングは、メタロプロテアーゼインヒビター(0ーフェナンススロリン)、ZーGlyーleuーNH2によって完全に抑制された。又システインプロテアーゼインヒビター、Eー64、leupeptinはカテプシンB、H、Lの成熟一本鎖から二本鎖への変換を抑制した。以上の結果はメタロエンドペプチダーゼが、カテプシンB、H、Lのプロペプチドのプロセシングに重要な役割を果し、リソゾームに至る以前におこっているとも考えられる。又一本鎖成熟酵素の二本鎖への変換はリソゾーム内でシステインプロテアーゼによってなされていることを示唆するものである。
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