研究概要 |
リソゾ-ム内蛋白分解の主役であるシステインプロテア-ゼ群(カテプシンB,HおよびL)のリソゾ-ムへの局在化機構を主として培養マクロファ-ジを用いて研究した。いずれの酵素も生合成後ゴルジ装置ではプロ酵素として検出され、リソゾ-ムでは成熟酵素が検出される。このプロ酵素から成熟酵素への変換はメタロプロテア-ゼインヒビタ-やアスパルテックプロテア-ゼインヒビタ-によって制御される。プロ酵素から成熟酵素への変換を詳しく調べると、中間体と思われるバンドが検出できることから、この変換には異なるプロテア-ゼが連鎖的に働いている可能性もでてきた。一方、カテプシン群のcDNAクロ-ニングにより塩基配列を決定し、プレプロ部分を含む全一時構造を明らかにした。そこでプロ部分の合成ペプチドを作成し、プロカテプシンBおよびLに特異的な抗体を得ることができた。プロカテプシンBと成熟カテプシンBに対する抗体をエピト-プとして用いた免疫電顕法で、成熟型はリソゾ-ムに、プロ型は主としてゴルジ装置に存在することを確認した。細胞をメタロプロテア-ゼインヒビタ-で処理するとゴルジ装置の染色性が増強するので、ゴルジからリソゾ-ムへのプロセスの間でプロペプチドの切断が起こるものと考えられる。カテプシンLは他のカテプシンB,Hとは異なり、リソゾ-ムへ到達せずに細胞外へ分泌されるものが30%以上あり、ゴルジ装置以後のプロセンシグの過程が異なると推定される。マクロファ-ジではカテプシンLを多く含むリソゾ-ムは軽く、カテプシンBとHを多く含むリソゾ-ムは重いので、両者を分離することができた。またカテプシンLを含む小顆粒を免疫電顕法でとらえることができるが、これが分泌途上の顆粒である可能性もある。プロペプチドが細胞内での仕分けの信号となっている可能性をさらに追及する方法としてプロペプチドに遺伝子工学的に部分的欠失をつくり、細胞にトランスフェクションする方法も考えられよう。
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