研究概要 |
不死性を獲得している樹立培養細胞や癌細胞などで特異的に発現の見られる配列として単離したEL98cDNAについては引続き解析を行い、以下の結果を得た。 1.EL98のタンパク質コーディング領域をファージベクターpSP64に挿入し、SP6RNAポリメラーゼによって転写させて得られたRNAと、ハイブリセレクト法によって調製した細胞RNAとをin vitroの系で翻訳した。その結果、何れのRNAを用いた場合にも等電点5.4、分子量12,000のタンパク質が検出され、塩基配列から推測された値とほぼ一致することがわかった。従って、転写の見られる細胞においては、EL98タンパク質もしくはその相同タンパク質が産生され得るものと考えられる。 EL98タンパク質のカルシウム結合能の有無を調べるため、大腸菌の発現ベクターにEL98を連結し、生産の最適化と精製について実験中であり、あわせてEL98タンパク質の抗体を作成することを考えている。 2.EL98と相同な配列の発現が観察されたHeLa細胞のcDNAライブラリーから、相同配列をもつクローンをスクリーニングし、この塩基配列を決定したところ、全く同じ長さのタンパク質をコードし得るORFを有し、この領域の塩基配列レベルでEL98と約90%のホモロジーを持つことが明らかとなった。また、このcDNAにはスプライス部位の異なるクローンが含まれていたので、さらにこれを解析中である。 3.EL98をプローブとしたSouthern分析では、Hela細胞DNAを用いると、BamHIで約5.8kbのバンドが、XbaIでは7.4kbのバンドが検出された。このヒトゲノム遺伝子とEL98の由来するマウスBalb/cのゲノム遺伝子を解析するために、それぞれのゲノムライブラリーをスクリーニング中である。
|