研究概要 |
昨年度我々は松果体および肝臓からアリルアミンNーアセチル転移酵素(NAT)のcDNAを合計6種類(ニワトリから3種類とヒトから3種類)クロ-ニングし、その全塩基配列を決定した。ヒトを含む哺乳動物の肝臓のNATはアミノ基を含む薬物の主要代謝経路であり、活性が高い個体と低い個体があり遺伝的に継承されることが知られており、遺伝薬理学上注目されてきた酵素であった。 我々が昨年ヒト肝臓からクロ-ニングしたcDNAには3種あり、そのうちの2種類は翻訳領域に一塩基置換がありその結果アミノ酸残基が一個異なるものであることが判った。本年度はこれら3種類のcDNAを発現ベクタ-に結合したのちCHO細胞に導入し、発現したNAT活性を調べた。その結果2種類のcDNAから発現した酵素の基質特異性は極めてよく似ており、従来から多型性NATと考えられていた酵素をコ-ドしているものと考えられた。これに対し第三のcDNAは従来から単型性NATと考えられていた酵素をコ-ドしたものであることが判った。多型性NATの2種類のcDNAのうち片方は培養細胞で極めて高い酵素活性を発現したのに対し、もう一つのcDNAは低い活性しか発現しなかった。これは後者がーアミノ酸置換により不安定な蛋白質に変異した結果であると考えられた。また、ヒトの遺伝子DNAのサザンブロット解析を行なったところ、KpnIおよびBamHIの分解により、遺伝子にRFLPが認められることが判った。また多型性NATの遺伝子には3種類存在し、そのうち一種類の遺伝子が高いNAT活性に対応するのに対し、2種の遺伝子は低いNAT活性に対応することが判った。これら3種の遺伝子の組合わせにより、rapid,intermediate,およびslow acetylator表現型が作り出されることも明らかになった。
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