アミノ基を含む務生体内物質および薬物は、N-アセチル化されることにより生理活性を示すようになる場合と、逆に不活性化され排出される場合とがある。メラトニン生合成酵素であるセロトニンNAT(SNAT)は前者であり、肝臓などのアリルアミンNATは後者に属する。本研究ではこれら多様な機能を示すNATのcDNAと遺伝子DNAをクロ-ニングし、その構造と機能を解析するとともに、多型性の基盤をなす遺伝子変異を明らかにしようとした。2年間にわたって以下の研究成果をあげることができた。 (1)ニワトリ肝臓のNATを部分精製し、これを抗原として単クロ-ン抗体を多数作成した。この抗体を用いたアフィニテイカラムによりNATを単一の蛋白にまで精製し、そのアミノ酸配列を一部決定した。(2)このアミノ酸配列に対応するオリゴヌクレオチドをプロ-ブとしてニワトリ肝臓のNATのcDNAをクロ-ニングするとともに、これを発現ベクタ-に結合したのちCHO細胞で発現させることに成功した。(3)ニワトリ肝臓のNATのcDNAをプロ-ブとして、ニワトリ松果体のcDNAライブラリ-よりNATのcDNAを2種類クロ-ニングしたが、その一つは脳に、他は腎臓に強く発現していることが判った。(4)ニワトリ肝臓のNATのcDNAをプロ-ブとしてウサギおよびヒトの肝臓のNATのcDNAをクロ-ニングした。ヒトについては多型性NATのcDNAが2種類分離できたが、これは高い活性のNATと低い活性のNATに対応するものであることが判った。 (5)ヒトの遺伝子DNAのRFLP解析からNAT遺伝子型と、アセチル化反応表現型との対応関係が明らかになった。 (6)ウサギのNATのcDNAを用いてウサギ遺伝子の解析を行ったところ、NAT活性が低い個体ではNAT遺伝子の一部が欠損していた。
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