研究概要 |
1) 腫瘍組織における膵分泌性トリプシン・インヒビター(PSTI)の産生とその構造 肺癌17列のうち14例において免疫組織化学的にPSTI陽性所見を認めた。これからmRNAを抽出し、formalin agarose gelで電気泳動を行った後、ナイロンフィルターにトランスファーした。PSTIcDNAをプローブとして、nothern hybridizationを行ったところ、膵臓のPSTIと同じ位置に一本のバンドを認め、肺癌組織でPSTImRNAが発現していることを確認した。PSTImRNAのサイズは膵癌のPSTIと同じで、発現量は膵臓の約1/50と算定された。肺癌1例とS状結腸ポリープ1例からPSTIcDNAをクローニングし、その構造が膵臓のPSTIと同一であることを証明した。 2) 各種培養細胞系に対する膵分泌性トリプシン・インヒビター(PSTI)の特異的結合の検討 PSTIはBUD-8,Flow-1000、WI-38、Aー431、HCTー15、FR、3T3、CPAEの細胞系に対して特異的に結合した。しかしPSTIと構造が類似していることが知られているEGFの結合数とは異ったパターンを示した。Flow-1000に対する^<125>I-PSTIのcompetition assayで、非標識のPSTIは^<125>I-PSTIの結合を阻害したが、一方過剰のEGFは^<125>I-PSTIの結合を阻害しなかった。また逆にAー431に対する^<125>I-EGFの結合はPSTIにより阻害されなかった。このことより、各種細胞にPSTIが特異的に結合する部位があること、その部位がEGFレセプターとは異なる部位であることが示唆された。 3) 3T3 Swiss-albino細胞における膵分泌性トリプシン・インヒビター(PSTI)の特異的結合の解析 PSTIの3T3細胞に対するKd値は2.8pMと0.1pMであり、2種の異った結合部位の存在することが示唆された。
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