ADPーリボシル化反応による遺伝子情報発現の制御

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480136
• 研究機関: 高知医科大学
• 研究代表者: 静田 裕 高知医科大学, 医学部, 教授 (50025631)
• 研究分担者: 戸田 勝巳 高知医科大学, 医学部, 助教授 (40197893)
• キーワード: cDNAクロ-ニング / genomic DNAクロ-ニング / ADPーリボシル化酵素 / モノクロ-ナル抗体 / マイクロインジェクション

研究概要

ADPーリボシル化酵素は、活性発現の為にDNAの存在を必要とし、また反応中に自己修飾を受ける。そこで本酵素の活性発現の特性と共に本酵素の遺伝子がどの様な特性をもつかを明らかにする為に、cDNAおよびgenomic DNAの単離を行ない、以下の知見を得た。
1)cDNAから推定した本酵素は1014個のアミノ酸残基から成り、推定分子量は113153で、N末より順にDNA結合ドメイン、自己修飾ドメイン、基質NADの結合ドメインから成る塩基性蛋白質である。DNA結合ドメインには2ケ所に亘りZinc fingerが存在する。またこのドメインは、発癌遺伝子産物cーfos、v-fosと相同性がみられる。
2)promoterを含むgenomic DNAを単離してその特性を調べると、TATAーboxやCAT boxは存在しないが、Sp1を結合するGC boxが3ケ所に亘って存在する。またAPー2を結合するConsensus.sequenceが、3ケ所に亘って存在する。そして事実、CAT assayでもNothern blotによる解析でも、本酵素の転写がcAMPおよびphorbol esterの双方によって顕著な促進を受けることが判明した。なおTotal Southern blotによる解析では、本酵素遺伝子は1個のみである事が明らかになった。
3)各ドメインに対応するモノクロ-ナル抗体を用い、本酵素の半減期を測定すると、いづれの抗体を用いた場合にも、約15時間と云う値が得られた。またこのモノクロ-ナル抗体を得たので、各種培養細胞に、microinjectionを行うとuridineの取り込みよりもthymidineの取り込みが若干低下するという予備的知見が得られた。すなわち本酵素は細胞の複製に何らかの制御を与えるものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] K.Kurosaki et.al.: "Primary Structure of Human Poly(ADP-ribose)Synthetase as Deduced by cDNA Sequence" J.Biol.Chem.262,263. 15990-15997,7437-7438 (1987,1988)
• [文献書誌] Y.Yokoyama et.al.: "Human Poly(ADP-ribose)Synthetase Gene" J.Biol.Chem.265.
• [文献書誌] K.Toda et.al.: "Alternative Usage of Different Poly(A)Addition Signals for Two Major Species of mRNA encoding Human Aromatase P-450" FEBS letters. 247. 371-376 (1987)
• [文献書誌] Y.Mitsuuchi et.al.: "Cloning and Expression of cDNAS for Human Poly(ADP-ribose)Synthetase" Eur.J.Biochem.189.
• [文献書誌] 戸田勝巳他: "ヒト胎盤アロマタ-ゼPー450のcDNAクロ-ニング" 生化学. 61ー1989. (524)
• [文献書誌] 戸田勝巳他: "ヒト胎盤アロマタ-ゼのcDNAの単離とその発現機構" 生化学. 61. 852 (1989)
• [文献書誌] Shizuta et al.: "(Molecular Structure of Poly(ADP-ribose)Synthetase)ADP-Ribose Transfer Reactions" Springer-Verlag, 527 (1989)
• [文献書誌] Kameshita et al.: "(Synthesis and Degradation of Poly(ADP-ribose)Synthetase ADP-ribose Transfer Reactions" Springer-Verlag, 527 (1989)