研究概要 |
ADP-リボシル化酵素は、真核細胞の核内に存在し、種々の核蛋白を修飾して、遺伝子発現の制御を行う重要な酵素である。 本酵素は、活性発現の為にDNAの存在を必要とし、また反応中に自己修飾を受ける。そこで本酵素の活性発現の特性と共に本酵素の遺伝子がどの様な特性を持つかを明らかにする為に、cDNA及びgenomicDNAの単離を行い、以下の知見を得た。 (1)cDNAから推定した本酵素は1014個のアミノ酸残基から成り、推定分子両は113153で、N末より順にDNA結合ドメイン、自己修飾ドメイン、基質NADの結合ドメインから成る塩基性蛋白質である。DNA結合ドメインには2ヶ所に亘りZinc Fingerが存在する。またこのドメインは、発癌遺伝子産物c-fos,v-fosと相同性がみられる。 (2)Promoterを含むgenomicDNAを単離してその特性を調べると、TATA-boxやCATboxは存在しないが、Sp1を結合するGC-boxが3ヶ所に亘って存在する。またAP-2を結合するConsensus Seqvenceが、3ヶ所に亘って存在する。そして事実、CATassayでもNorthern blotによる解析でも、本酵素の転写がcAMP及びPhorbolesterの双方によって顕著な促進を受ける事が判明した。尚Total Southern blotによる解析では、本酵素遺伝子は1個のみである事が明らかになった。 (3)各ドメインに対応するモノクロ-ナル抗体を用い、本酵素の半減期を測定すると、いづれの抗体を用いた場合にも約15時間と云う値が得られた。またこのモノクロ-ナル抗体を得たので、各種培養細胞にmicroinjectionを行うとUridineの取り込みよりもThymidineの取り込みが若干低下するという予備的知見が得られた。すなわち本酵素は細胞の複製に何らかの制御を与えるものと考えられる。
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