研究課題/領域番号 |
63480144
|
研究種目 |
一般研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
実験病理学
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉田 浩己 鹿児島大学, 医学部, 教授 (90036476)
|
研究分担者 |
藤吉 利信 鹿児島大学, 医学部, 助手 (50173480)
吉田 愛知 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (20036453)
|
研究期間 (年度) |
1988 – 1989
|
キーワード | コレステロ-ルエステル / トリグリセライド / 酸性リパ-ゼ / ラット |
研究概要 |
広範な組織、臓器にコレステロ-ルエステルの大量蓄積を生じ、その結果、小児期に致命的な経過をとるWolman病がある。我々はこの疾患モデルを呑竜系ラットに樹立し、このラットの臨床、病理、生化学、遺伝的特徴を明らかにした。疾患ラットは雌、雄とも生殖能力を欠き、ヘテロラットで系統維持が必要。ヘテロ間での交雑結果、疾患ラットと非疾患ラットの比は1:2.86、又疾患ラット内での雌雄比は1:1.33で、この疾患は、常染色体劣性遺伝子であった。このラットの肝、脾、リンパ節および腸管は黄色調を呈し、著明に腫大する。肝のKupffer、細胞、脾及びリンパ節の細網細胞、腸管の組織球の胞体は泡沫化、肝細胞は空胞化する。電顕的にはライソゾ-ル内にvacualeとcrystalが認められた。生化学的検索の結果肝ではコレステロ-ルエステル、コレステロ-ル、トリグリセライドが、又脾にはコレステロ-ルエステルのみが大量に蓄積していることが明らかとなった。燐脂質に異常は認めなかった。さらに精査の結果[^<14>C]-triolein、[^<14>C]-cholesteryl oleateや4-methylumbelliferyl oleateに対するライソゾ-ルのacid lipaseの活性は著しく低下していた。この疾患ラットは生後120日ごろまでに死亡した。この時点では血中のコレステロ-ル量も上昇しているが、形態学的検索結果では動脈硬化症は認められなかった。人においても1才未満で死亡するWolman病患者では、動脈硬化病変は認められず成人まで生存するcholesterol ester storage diseaseでは動脈硬化が高頻度に認められる。このことより動脈硬化は多元的であり、lysozomal acid lipaseの相対的活性低下も動脈硬化の重要な促進因子のひとつと考えられている(de Duve,1974年)。ゆえに動脈硬化症の素因を十分に有するこのラットは、動脈硬化発症モデルにもなる可能性があるので現在コレステロ-ルを混じた餌で長期間飼育観察中である。
|