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1990 年度 実績報告書

遺伝性肝炎自然発症ラットの肝細胞障害機序に関する病理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 63480145
研究機関札幌医科大学

研究代表者

森 道夫  札幌医科大学, 医学部, 教授 (00045288)

研究分担者 服部 淳夫  札幌医科大学, 医学部, 助手 (90208538)
榎本 克彦  札幌医科大学, 医学部, 助教授 (20151988)
キーワードLECラット / 劇症肝炎 / 慢性肝炎 / 肝癌 / 遺伝性肝障害 / 疾患モデル動物 / 肝障害 / リボゾ-ムRNA
研究概要

遺伝性肝炎ラット(LEC)は,常染色体劣性遺伝によって肝炎(肝細胞障害)を発症し,その経過の中で,高率に肝癌の発生をみる新しい突然変異動物である。LECラットの肝炎は,生後4ケ月目に比較的突然発症し,約40%の動物は発症後1〜2週間以内に肝機能不全で死亡する。このような経過はヒトの劇症肝炎に類似しており,肝炎劇症化の機構を解析するためのモデル動物となる。一方残りの60%の動物は,慢性の肝細胞壊死と肝細胞の再生を繰り返しながら生存し,生後1年を過ぎると,全例に肝癌の発生をみる。このようにLECラットは,ヒトの肝癌発生における慢性肝障害の意義を解析するための動物モデルとなる。LECラットの肝細胞障害機序を,この動物のDーガラクトサミンに対する高感受性を手がかりに,リボゾ-ムRNAのメチレ-ションに働くSーアデノシルメチオニン合成酵素について検索した結果,LECラットの肝細胞における同酵素の著しい活性低下がみいだされた。リボゾ-ムRNAメチル化の低下は,肝細胞の蛋白合成を障害し,肝細胞を壊死に導く。最近LECラット肝に,大量の銅の蓄積が証明された。その蓄積機序を解析し,銅蓄積の原因が,肝細胞から胆汁中への排泄機構の障害である可能性を示す結果を得た。肝の銅は生後次第に増加して生後4ケ月目にピ-クとなることから,銅の蓄積と肝炎の発症に正の相関が認められ,銅の蓄積を介したSーアデノシルメチオニン合成酵素の2次的な活性低下が,肝細胞障害の原因と考えられた。
一方肝炎の発生に伴って,LECラットはDNA損傷の修復能が低下し,化学発癌物質に対する感受性を著しく増す。このようにして発癌イニシエ-タ-の作用を受けた肝細胞は,肝炎に伴う内因性の増殖因子によって選択的に増殖し,肝癌に至ることが強く示唆された。このように,慢性の肝障害は,発癌のイニシエ-ションとプロモ-ションの両方の機構に促進的に働くことが,LECラットの検索から明らかにされた。

  • 研究成果

    (7件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (7件)

  • [文献書誌] Fujimoto,Y.,Oyamada,M.,Mori,M.et al.: "Accumulation of abnormally high ploid nuclei in the liver of LEC rats developing spontaneous hepatitis." Jpn.J.Cancer Res.80. 45-50 (1989)

  • [文献書誌] Fujimoto,Y.,Takahashi,H.,Mori.M.et al.: "Hereditary hepatitis in LEC rats:Accumulation of abnormally high ploid nuclei." Cancer Detect.Prevent.14. 235-237 (1989)

  • [文献書誌] Shimizu,K.,Tsukada,K.,Mori,M.et al.: "Decreased activities of Sーadenosylmethionine synthetase isozymes in hereditary hepatitis in LongーEvans rats." Life Sci.46. 1837-1842 (1990)

  • [文献書誌] Takahashi,H.,Enomoto,K.,Mori,M.et al.: "High sensitivity of the LEC rat liver to the carcinogenic effect of diethylnitrosamine." Cancer Let.,. 51. 247-250 (1990)

  • [文献書誌] Sawaki,M.,Enomoto,K.,Mori,M.et al: "Phenotype of preneoplastic and neoplastic liver lesions during spontaneous liver carcinogenesis of LEC rats" Carcinogenesis,. 11. 1857-1861 (1990)

  • [文献書誌] Enomoto,K.,Takahashi,H.and Mori,M.: "A new rat model for the study of hepatocarcinognensis." J.Gastroenterol.Hepatol.(1991)

  • [文献書誌] Mori,M.,Yoshida,M.C.,Takeichi,N.and Taniguchi,N.: "The LEC Rat:A New Model for Hepatitis and Liver Cancer." SpringerーVerlag, 256 (1991)

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公開日: 1993-08-11   更新日: 2016-04-21  

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