研究概要 |
われわれはこれまでの研究で,マウスtype C xenotropic及びecotropicウイルスの<env>___ー領域,ecotropicウイルスの<gag>___ー領域及び<pol>___ー領域と相同性を持つ配列が,その存在様式は異なるけれども日本住血吸虫・マンソン住血吸虫の成虫あるいは虫卵に存在し,また,抗Bv2 gp70抗体で住血吸虫雄成虫のtegument下層と雌成虫の卵黄腺に特異的反応が見られることを明らかにした.さらに,Polymerase chain reaction法(PCR)を用いて住血吸虫遺伝子中のマウスレトロウイルス関連配列の検出を試みた.プライマ-セットにはMoーMuLVの<gag>___ー,<pol>___ー及び<env>___ー領域の20マ-を作成し,検出にはFーMuLVプロウイルスDNAをプロ-ブとして用いた.<pol>___ーのプライマ-を用いた反応では両種住血吸虫及び肺吸虫DNAからその関連配列が増幅されたが,その程度はマンソン住血吸虫成虫で低く,<gag>___ーのプライマ-を用いたPCRでは日本住血吸虫雄成虫とマンソン住血吸虫虫卵DNAでのみ,また,<env>___ーのプライマ-を用いたRCRではマンソン住血吸虫雄成虫DNAで増幅が認められる場合があり,これらの各DNA中での存在様式は多様であることが示唆された.一方,マウスintracisternal A粒子ゲノムDNA(pS81Aをプロ-ブとして用いたサザンブロットによると,日本住血吸虫成虫とマンソン住血吸虫虫卵DNAで強いシグナルが検出されたが,マンソン住血吸虫成虫及び肝蛭DNAにはその関連配列が欠失していた.このことはまた,マウスendogenous type CレトロウイルスDNAをプロ-ブとしたサザンブロットでも同様であった.マウスtype Bレトロウイルスのproviral DNAをプロ-ブとした場合では,いずれのDNAでもシグナルは検出されなかった.以上の知見は,住血吸虫DNA中のレトロウイルス関連配列の存在様式が,われわれが他方で明らかにした住血吸虫ゲイムDNAの再編成,特にマンソン住血吸虫のそれと強く相関していることを示している.
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