プラスミドRts1の複製必須蛋白質RepA(33ka)は、複製開始能とrepA遺伝子の転写を抑制するオートリプレッサー活性を併せ持つ。両活性と構造との相関を知るために、すでに得られたRepAcopl蛋白質(Arg_<142>→Lys)、C末端を修飾したRepA C_6に加え、今年度は新たに次のような変異株を分離し、機能を解析した。 1.リンカー挿入repA変異株:pFD51にoriとrepAを連結したミニRts1再構成株pTW100を出発材料とした。repA上のStyI、xbaI切断部位にEcoRIリンカーを挿入することにより、それぞれ12塩基対が付加されたpTW100iS、pTW100iXと、StyI部位に複数のリンカーが挿入されたpTW100iS'を得た。 2.変異株の複製能:pTW100は大腸菌JG112(polA)に形質転換できるが変異株はどれもJG112へは形質転換されなかった。このことは、変異株にコードされる変異RepA蛋白質には複製開始能はないことを示す。 3.変異株のオートリプレッサー活性:変異repA領域をpACYC184にクローン化したプラスミドと、repAのプロモーター・オペレーター領域をpFD51のgalK上流に挿入したプラスミドを大腸菌AB1157(galK)に共存させ、前者由来のRepA蛋白質がgalK発現に与える影響を調べた。その結果、変異蛋白質のうち、RepAiS、RepAiXは野性型RepAと同程度に強くgalK発現を抑えたが、RepAiS'は全く抑制しなかった。 4.変異RepA蛋白質の合成:抗RepA抗体を用いたイムノブロット法により、RepAiS、RepAiXは野性型RepA相当の蛋白質として合成されていることが確認された。 以上の実験成績は、蛋白質RepAがoriを活性化しプラスミド複製を開始させるためには厳密なアミノ酸配列が要求されるが、オートリプレッサー活性にはそれ程の厳密さは要求されないことを示唆している。
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