プラスミドRtsLの複製必須蛋白質RepA(288アミノ酸残基)の主要な機能(複製開始能と不和合性/オ-トリプレッサ-活性)の発現に、C末端が重要な役割を果すことが、昨年までの研究により推定されていた。そこで今年度は次のような研究を行い、成果を得た。 1.repA遺伝子3′末端への変異の導入:合成オリゴヌクレオチドを用いたsite directed変異法により、repA3′末端変異プラスミドを得た。そしてクロ-ン化されたこれら変異repA遺伝子を持つ大腸菌は、すべてRepA相当の蛋白質を合成することを、抗RepA抗体を用いたウエスタンブロット法により確認した。 2.変異RepA蛋白質の種類:C末端のアミノ酸残基をそれぞれ2、4、5コ欠失したものと、N末端からそれぞれ268、279、282、288番目のアミノ酸が置換されたもの、計7種類であった(塩基の変化より推定)。 3.変異RepA蛋白質の機能:(1)Z268(Lys268→Gln)とZ279(Arg279→Gly)を除く他の5変異RepAは複製開始能を保持し、ZΔC4蛋白では複製開始能が亢進していることが特記される。(2)Z279とZΔC5蛋白は野性型RepAと同程度の不和合性を発現するが、他の5変異RepAは不和合性/オ-トリプレッサ-活性が低下し、DNA結合能の減少が示唆された。 以上の結果から、少くとも次のことが結論される。(1)Lys268は複製開始能と不和合性/オ-トリプレッサ-活性に関与する。(2)Arg279は複製にのみ関与する。(3)RepA末端の4コのアミノ酸残記を除くことにより、DNA結合能は低下するものの、複製開始能は亢進する(これは単にRepA合成量が増加したためではないと推定される)。
|