研究概要 |
インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)の異なる抗原型をもつ,H4,H6,H8,H9,H11,H12の7つのHAについてクロ-ニングを行ない,アミノ酸配列を推定した。そして1〜13のサブタイプのHAたんぱく質についてレセプタ-結合部位のアミノ酸の比較と,種々のオリゴ糖を用いてレセプタ-の特異性を検討した所,H3サブタイプで言われている事と他のサブタイプのHAたんぱく質は性質が異なることがわかった。HAたんぱく質上の微細構造をH3サブタイプとH1サブタイプで比較するため,H1HAcDNA上にアミノ酸残基224ー230に対応する塩基の欠損変異を部位突然変異法によって導入し,この変異HAをSV40の後期プロモ-タ-を用いてサル腎細胞で発現させた。H3サブタイプHAたんぱく質ではこのアミノ酸の欠損が自然界から分離されており,H3サブタイプHAではレセプタ-結合構造のうち第2壁はレセプタ-の特異性に関係しているがレセプタ-結合能には影響がないとされていた。しかしH1サブタイプHAではこの欠損たんぱく質は細胞内で合成され細胞表面に突出することが蛍光抗体法によって同定されるが,このたんぱく質はレセプタ-結合能を失なっていることが判明した。レセプタ-特異性はH3サブタイプHA以外には見つかっていない事などから,H3サブタイプHAのレセプタ-結合構造は他のサブタイプとは異なっているのではないかと推定される。X線回析によるHAの3次構造はH3サブタイプHAしか出されていないので他のサブタイプのHAたんぱく質の3次構造の解明が期待される。
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