研究概要 |
培養細胞にクロ-ン化されたB型肝炎ウイルスのDNAをトランスフェクションさせると増殖を起こす系を我々が1984年に確立して以来、このウイルスの分子生物学的研究が世界的に進展した。しかし、ウイルスのDNA合成に必須のDNAポリメラ-ゼがどのようなしくみで作られ、またウイルス核酸がどのようにしてコア(穀)の中にパッケ-ジングされるのか、そのしみくは不明のまま残された。そこで、これら二点について検討を行った。 1. ウイルスDNAポリメラ-ゼは、コア・タンパクと融合した形で合成され、後で切り離されるのか。ウイルスゲノム上の遺伝子の配置を見ると、コア→DNAポリメラ-ゼと続いており、上の間題には実験的に迫るしかない。そこで、コアタンパク合成の開始はできないがDNAポリメラ-ゼと思われる遺伝子の発現のみはできるようにウイルスゲノムを改変し、これをトランスフェクションした。その結果、ウイルスDNA合成は起こり、融合タンパクができてあとで切り離されるとする考えは否定された。メッセ-ジRNAに関する知見と合わせ考えると、DNAポリメラ-ゼタンパクを合成するためには、先ずコンタンパクの合成が何らかのしくみで抑えられ、次に、RNAの内部にある開始コドンからリボゾ-ムが働き始めるしくみが具わっていると考えられる。 2. 合成されたウイルスDNAがどのようなしくみでコア中に包み込まれるかを見るために、プレゲノム核酸の5末端付近に種々の欠失を作ったウイルスゲノムDNAを用いてテストを行った。その結果、この核酸の極く限られた領域,即ちコアタンパクの開始コンドンのすぐ上流に75ヌクレオチド以内の大きさでパッケ-ジングの有無を司る領域のあることを明らかにした。どのようなタンパク質がここに相互作用するかが次の課題である。
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